2024年8月20日火曜日

コラム『ココロとカラダの薬箱』第25回

岩槻の情報紙「ら・みやび」

NO.664より転載

1冊の気になる本












現在、74歳の私が人生で最も影響を受けた本は何か。

1冊あげなさいと言われたら真っ先に挙げるのが、

時実利彦先生(大脳生理学者)の『人間であること』です。

脳の話も影響を受けました。

2冊とも岩波新書で、その2冊が私にとっては、

バイブルみたいなものです。



 高校時代に読んだ本が今の私を支えてくれています。

今ではボロボロになった本を

時々ですが開きます。

すると新たな発見があります。

何十年経っても先生はこんなこと言いたかったんだろうな。

時代が変わったけれども、基本はこれだと気付かされます。

そういう意味で自身が影響を受けた本を手元に置くことは、

心の安らぎにも拠り所にもなります。



時実先生は著書の中でこんなこと言われています。

『植物は生きている』『動物は生きていく』

『よりよく生きるのが人間である』。

ただ生きているのであれば植物だよ。

ただ生きていくのは動物だよ。

よりよく生きる存在こそが人間である。











高校生の私にとって『よりよく生きる』とは

何かが永遠のテーマになりました。

大学で心理学を学んだのもそれがきっかけです。

大学紛争の真っ只中です。

否が応でも『人間がより良く生きるとは何か』を

考えさせられました。

今思えば、50年以上に渡って、

このテーマでやってきたことになります。













 自分が障害者の方たちに関わるようになって半世紀。

現在も『こころの相談室』で無料の心理相談を続けていますが、

その根底にあるのは、やはり

『人間、よりよく生きるとは何か』です。

一人ひとりの子供が、今目の前のお子さんが、

よりよく生きるためには何が必要か。

社会人になり、数十年ほど経って辿り着いた答えが、

『母親を楽にさせる』でした。

母親が楽になれば、子供も楽になれる。

当たり前に思えますが、これが難しい。

日々の生活の中で母親が楽になれる事はないか。

ほっとできる時間は作れないか。

一緒に探すのが、私の相談のスタイルになりました。

難しいことは言いません。

それはいけない。こうやったほうが良い。

こうあるべきだ。そんなことは言いません。

甘えではありません。

子供のためにも自分自身が少しでも楽になることが、

『人としてより良く生きる権利』だからです。

世の中には、そこらかしこの資料を集めて

誠しやかに蘊蓄を述べる方がいます。

そういう方に限って『あるべき論』なのです。

あるべき論に惑わされないでください。


【NPO親子ふれあい教育研究所代表(元大学教授)藤野信行








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